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全社員でAI研修をしたら、
いちばん前のめりだったのは工場だった
働き方が変われば、届けるものも変わる ――日新化工の取り組み
青梅慶友病院、
”みんなで同じデザート”のバレンタイン

バレンタインの日に、入院患者全員にふるまわれた約300食のデザート。残食はほとんどなかった
生成AI、使っていますか? 「会社でツールは導入されたけど、あまり触っていない」。そういう方、多いのではないでしょうか? 道具を配っただけでは、人はなかなか使いません。それは当社も同じだろうと思っていました。
日新化工は1948年から業務用チョコレートをつくってきた会社です。B to B、かつ歴史が長いので、保守的なイメージを持たれることもあります。
そんな日新化工が、2025年から生成AIの研修を始めました。しかも事務職だけでなく、工場で製造に携わる従業員まで。全員です。
やってみたら、予想が(いい意味で)ことごとく裏切られました。その取り組みをご紹介します。
松本 琢磨
日新化工株式会社 経営企画部 DX推進室。DX推進室の立ち上げからワークフローシステムの全社導入まで、社内のデジタル化を主導。生成AI活用の言い出しっぺの一人。
小島 未妃
日新化工株式会社 管理部 総務課。採用や研修の企画運営などを担当。工場と本社を行き来しながら、新入社員研修も手がける。趣味はテニスのアクティブ派。

目 次
- 部長だけのはずが、全社員になった日
- 全員が受ける。でも、中身は部門で違う
- いちばん前のめりだったのは、工場でした
- 「AIで調べればいいじゃん」と、逆に言われる
- 「なんで前と同じことするの?」と聞かれる会社です
- 「これはチョコレートだ」と思った、
展示会での出会い - 4人から始まり、
フロア20人のレクリエーションへ - 食べられる方にしか提供できなかった。
そのジレンマが解けた
目 次
- Chocolate makes you smile.の目指す笑顔
- ガーナのカカオ産地が抱える、いくつもの課題
- キャッサバ加工所がもたらした「自立」のサイクル
部長だけのはずが、全社員になった日
「これはチョコレートだ」と思った、
展示会での出会い
「弾むショコラ」で実現した
”みんなで同じデザート”のバレンタイン
そもそもの始まりは、環境の整備でした。
以前、社内では社員がそれぞれ個人の判断でAIツールを使っていました。ChatGPTだったりGeminiだったり、バラバラです。会社として業務で使える基盤がなかったので、まず共通のAIツールを導入しました。ただ、環境をつくることと、使われることは別の話です。
「作業はAIに任せて、人が思考しなければいけないところに時間を割く。そういう働き方になれば、というのが導入のきっかけです。でも、環境を用意して『使ってください』と言っても、なかなかみんなが使ってくれるものではありません」(松本)
だから、渡して終わりにはしませんでした。まず社内向けの勉強会です。工場と本社に分かれて、サインインの方法から「プロンプトって何ですか」というところまで、基礎の基礎を中心に。
それにプラスして、実務につながる使い方を外部の研修会社にお願いすることにしました。このとき想定していた対象は部長・次長層です。まず管理職から始め、手応えを見て段階的に一般職にも広げていく。
ところが役員から「なぜ全社的にやらないのか」という声が上がり方向転換。
「これだけ基本的なトレーニングであれば、全員が受けるべきだろうと。そこに差を設けたくないというのが、会社としての考え方だったと思います」(松本)
こうして対象は一気に全社員へ。当社は東京の本社のほか、千葉県の船橋に工場があり、グループ会社のエイコウ製菓も含めると、製造に携わる従業員がたくさんいます。


本社での講習会の様子。日々の業務にどのように活用しようかと興味津々
全員が受ける。でも、中身は部門で違う
4人から始まり、
フロア20人のレクリエーションへ
製造業の生成AI研修は、パソコンを日常的に使う事務部門だけ、というケースも少なくありません。全員でやると決めたことで、研修の中身を根本から考え直すことになりました。事務職向けの内容を、そのまま製造職に出しても意味がないからです。
そこで、事前に全社員へアンケートを取りました。「生成AIでこれができるようになったらいいな」という要望を集めて、そこから部門ごとに演習の題材を組み替えたのです。
生産部門で扱ったのは、業務報告書のレビュー、作業手順書のレビュー、安全管理の注意喚起資料の作成など。どれも普段やっている仕事です。
「まったく関係ない題材を選ぶと、何のためにやっているんだろうという話になってしまいます。業務とどうつなげられるかは、いちばん大事にしました」(小島)
もうひとつ、仕込んだ仕掛けがあります。
「トレーニングをやりますと日程を伝えても、当日まで温度が上がっていない人もいると思うんです。少しでもウォーミングアップしておいてもらうために、事前に動画を見てもらうことにしました」(小島)
当日の限られた時間を最大限に使って、翌日から実務で使える状態にする。エンジンをかけていきなり全力で走らせても、うまくは動きません。そのための準備、いわば暖機運転でした。
キャッサバ加工所がもたらした
「自立」のサイクル


左)研修前に配信した「動画視聴のお願い」。ここから暖機運転が始まる。
いちばん前のめりだったのは、工場でした
いちばん前のめりだったのは、
工場でした
食べられる方にしか提供できなかった。そのジレンマが解けた
さて、実際にやってみた結果です。
いちばん予想外だったのは、生産部門の反応でした。
「はじめは、AI活用に関心をもってもらえるか、とても不安でした。でも、前のめりで聞いてくれる人は生産部門のほうが多かった気がします」(小島)
講師に質問する人。レクチャーが終わったあとに個別に聞きに来る人。チャットで「これはどうすればいいですか」と送ってくる人。
なかでも印象に残っているのが、ある社員から届いたチャットだそうです。
前々から、改善したい業務を抱えていた方でした。ただ、ITやAIには苦手意識があって、研修中も「僕はできないよ」と話していたといいます。
その方から、研修が終わったあとにこんなメッセージが届きました。
「この業務を改善したいのですが、どういうプロンプトを書けばできますか」
やりたいことは、ずっと前からあった。足りていなかったのは、手段のほうだったわけです。
「思っていた以上に、みなさん受け取ってくれました。きっかけの渡し方さえ間違えなければ、ちゃんと届く。それがいちばんの学びでした」(小島)
営業部門でも変化がありました。これまで外部の業者にお願いしていた販促物のイメージ出しを、自分で手がけるようになった社員がいます。展示会用のクリアファイルのデザインでは、伝えたい商品の雰囲気に近づくまでプロンプトを書き直し、出てきた案を見てはまた指示を練り直す。そうして固めていったイメージが、最終的に採用されました。




「AIで調べればいいじゃん」と、逆に言われる
「AIで調べればいいじゃん」と、
逆に言われる
研修後、変化がありました。例えば社内稟議のための資料です。
「扱う論点の幅が広がったように感じます。全体像のなかでどこに手を打つのがいいか、という整理が入ってくる。ゼロから資料を作るのは大変ですが、下書きをAIに任せれば抜け漏れが減りますし、時間もかかりません」(松本)
さらに、もっと日常的な場面でも。
「私が工場に行ったとき、現場で分からない業界用語を聞くと、逆に『AIで調べればいいじゃん』って冗談半分で言われるんですよ。とっつきの早さに驚かされました(笑)」(小島)
これまで人に聞いて確かめていたことを、まずAIに投げてみる。とっかかりをAIでつくる空気が、少しずつ広がってきました。
動いたのは現場だけではありません。
管理職と経営層は、社内チャットに「活用推進勉強会」の場をつくり、週に一回の持ち回りで、自分が学びをどう活かしたかを投稿しはじめました。号令ではなく、自分の使い方を持ち寄る形です。
「使ってみようと号令をかけている人たちが使っていなかったら、説得力がないですよね。だから、まず自分たちから『これ便利だったよ』という話を発信していこう、と」(松本)
投稿の内容は人それぞれです。なかには、実際にやり取りしたプロンプトをそのまま貼っている人もいました。まだ結論の出ていない検討事項が、そのまま書かれているものもあります。完成した結果だけでなく、そこに至ったプロセスをありのままに公開しているぶん、読んだ人のAI活用に対する解像度も、ぐんと上がります。
ある投稿には、次のようなコメントが添えられていました。
「思考を深めるアタマだしにはとても便利です。ここから壁打ちをスタートさせ情報の修正追加を繰り返しながら、自分の中で一定のレベルに達したと判断したら、関係者への提案資料として活用します」
AIは答えを出す道具ではなく、考えを別の角度から見直す相手として使われていました。違う視点を差し込んで、自らの考えを研ぎ澄ませていく。答えを追求するのはあくまで自分であり、AIはその過程を支えています。


右)投稿には、AIに投げかけた問いがそのまま添えられている。二つ目の問いは、一つ目で伝え漏れた条件を足したもの。
「なんで前と同じことするの?」と聞かれる会社です
「なんで前と同じことするの?」と
聞かれる会社です
ここまで読むと順調そうですが、いちばん難しいのはこの先だと口をそろえます。
「研修をやること自体は、実は簡単なんです。準備して、企画して、運営する。難しいのはその後のフォローアップ。学んだことを業務に結びつける理由づけをどう作るか、学び続ける機会をどう提供するか」(小島)
では、どうやって続けてもらうのか。
「ルールとして義務化した瞬間、熱量は一気に下がると感じています。私は昔、ゲームを作っていた経験があるのですが、飽きずに続けてもらうにはどうしたらいいか、という点では、ゲームの設計に近いのではないかと模索しています」(松本)
また、こんな話も。
「前例をよしとする会社は多いかもしれません。でも私の場合は、逆に『なんで前と同じことするの?』と聞かれることも多くて。私は入社してまだ数年ですが、入ってみて感じた良い意味でのギャップですね」(小島)
「歴史があってしっかりやっている、だからちょっと硬いんじゃないか。製造業で食品だし、保守的なんじゃないか。名前は知っているけれど中身までは知らない、という人はそう思うでしょうし、自分もそう感じていました。でも中では、結構いろいろやっているんですよ」(松本)
硬い会社だと思われたままでは、生まれるはずだったものも生まれません。新しい商品の相談も、一緒に働きたいという人との出会いも、まず知ってもらうところから始まります。
古くから受け継いできたものを守りながら、製品も、そこで働く人も、よりよくしていく。その先に、当社が掲げている提供価値があります。
Chocolate makes you smile.
チョコレートを通じて、たくさんの笑顔を。
つくる人の働き方が変われば、届けられるものも変わります。今回の研修も、そこへ向かう一歩でした。
これからどんな働き方をつくっていけるか。社内で交わされる言葉が変われば、その先に生まれる価値も変わっていくはずです。
二人の話は、まだ続いています。
※日新化工のDX化の取り組みは、こちらでもご紹介いただいております
楽々WorkflowII Cloudを起点とするDXプロジェクトで組織文化を変革(住友電工情報システム様)

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